君ともう一度、 恋を始めるために
思えば、生まれたばかりの莉奈を抱えた柚葉はひとりぼっちだった。
頼る人もなく知らない土地にやって来て、心細くて仕方がなかった。
もしあの時、マスターに出会っていなかったらと考えただけでも恐ろしい。
そういう意味でも、マスターに出会えたことは奇跡だった。

「なあ柚葉、これからは毎年桜の咲く頃にここに来ような」
「ええ、そうね」

―――その頃にはもう一人家族が増えているわ。

そう口に出しそうになって、柚葉は口をつぐんだ。

涼との出会いと別れと莉奈の誕生、その後の再会と再出発までのすべてが柚葉にとって運命だった。
同じように、莉奈もこの先生まれてくる子供達もそれぞれの人生を生きることになる。
だからこそ、親として、妻として、一人の人間として、恥じることなく生きようと、柚葉は心に誓っていた。
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