君ともう一度、 恋を始めるために
「面白そうな本ですね」
注文したコーヒーを待つ間に男性が声をかけてきた。

「ええ、今気に入っている小説です」
「そうですか」

本ならジャンルにこだわりなく、子供の頃からなんでも読む。
とにかく活字を追うことが大好きだ。

「僕はホテル経営を学んでいて、世界中の文化に興味があるんですよ」

確かに、彼の手元にあるのは経営学の本と旅行誌だ。
この時になって、柚葉はまじまじと男性の顔を見た。

「世界中の文化なんて…素敵ですね。」

柚葉は小さなの頃からあまり友達が多くなかったし、おしゃべりをするよりも本を読んでいるのが好きな子供だった。
そうやって人と深く関わるのを避けてきたからこそ、男性から向けられた柔らかい笑顔に心がキュッと締め付けられるような感覚を覚えた。

―――私、初めて誰かと話すのが楽しいと思ったわ。

柚葉は心の中でつぶやいていた。

***
< 3 / 203 >

この作品をシェア

pagetop