Good day ! 4【書籍化】
カフェを出ると、恵真は舞を連れて通路のすぐ先にあるお店に入る。
「こんにちは。予約してないんですけど、今からフライトシミュレーター、出来ますか?」
そこは一見グッズを取り扱っているショップに見えるが、実はマニアの間で有名な、本格的なフライトシミュレーターを体験出来るお店だった。
「大丈夫ですよ。機種とコースはお決まりですか?」
爽やかな笑顔の若い男性スタッフが対応してくれる。
ここは迷わずナナハチでしょう、と恵真はキリッと答えた。
「機種はボーイング787でお願いします。タキシングからランウェイに進入して離陸するコース、ありますか?」
「はい、ございます。お客様は当店のご利用は初めてですか? オートパイロットも選べますが、いかがでしょう」
「あ、えっと、ここは初めてなのですが……」
しどろもどろになってしまうが、実機を飛ばしているのだからきっと大丈夫なはず……。
何より、舞にしっかりパイロットらしいところを見せないと!と恵真は意気込んだ。
「マニュアルで大丈夫です」
「かしこまりました。では早速、シミュレーターにご案内しますね。こちらです、どうぞ」
ドアを開けて促され、恵真と舞はシミュレーターの中に足を踏み入れる。
「すごい、本格的ですね。わっ、ヘッドアップ・ディスプレイまである」
思わず呟くと、ああ、とスタッフは苦笑いした。
「実はこのハッド、まだ形だけなんです」
「そうなんですね。でも本当にすごいです。ねえ? 舞」
恵真と手を繋いだまま、舞も圧倒されたようにたくさんのスイッチや計器類を見渡している。
「すごいね、ほんとうのひこうきみたい」
「じゃあ、舞はこっちに座って見ててね」
「うん。おかあさん、ほんとにとぶの?」
「ほんとには飛ばないけど、飛んでるみたいな気分になるわよ。楽しみにしてて」
「わかった。がんばってね!」
「ありがとう!」
舞に微笑むと、恵真は左席に座る。
(えーい、キャプテンでもないのにごめんなさい!)
心の中で詫びると、スタッフの簡単な説明を聞いてから、いよいよスタート。
動き出したリアルな映像に、舞は目を丸くして息を呑んだ。
「うごいた! おかあさんって、ほんとにすごいのね」
「え、そう?」
タキシングだけでこんなに感激されることなどない。
恵真はすっかり気を良くしていた。
「よーし、舞の為にお母さん張り切っちゃうよ」
「うん、がんばって!」
「ではコーパイの舞さん、いよいよ離陸しますよ。Cleared for takeoff」
スラストレバーを押し進め、恵真は実機さながらに「Stabilize」とコールした。
続いてTO/GAスイッチを押すと同時にブレーキをリリース。
ゆっくりと機体が動き出し、オートスロットルのモードが変わるのを確認すると「Thrust Ref」とコール。
目の前に広がる映像は、滑走路の上をどんどん加速していった。
「わあー、すごいすごい!」
舞の興奮も最高潮に達する。
対気速度計が80ノットに達した。
「Eighty」
「V1」
「VR」
コールしながら、恵真はゆっくりと操縦桿を引く。
「舞、飛んだよ」
「わー、とんだとんだ!」
「Positive」
「Gear up」
最後に恵真は、管制官のセリフで締めた。
「J Wing 001. Contact Departure. Good day!」
「こんにちは。予約してないんですけど、今からフライトシミュレーター、出来ますか?」
そこは一見グッズを取り扱っているショップに見えるが、実はマニアの間で有名な、本格的なフライトシミュレーターを体験出来るお店だった。
「大丈夫ですよ。機種とコースはお決まりですか?」
爽やかな笑顔の若い男性スタッフが対応してくれる。
ここは迷わずナナハチでしょう、と恵真はキリッと答えた。
「機種はボーイング787でお願いします。タキシングからランウェイに進入して離陸するコース、ありますか?」
「はい、ございます。お客様は当店のご利用は初めてですか? オートパイロットも選べますが、いかがでしょう」
「あ、えっと、ここは初めてなのですが……」
しどろもどろになってしまうが、実機を飛ばしているのだからきっと大丈夫なはず……。
何より、舞にしっかりパイロットらしいところを見せないと!と恵真は意気込んだ。
「マニュアルで大丈夫です」
「かしこまりました。では早速、シミュレーターにご案内しますね。こちらです、どうぞ」
ドアを開けて促され、恵真と舞はシミュレーターの中に足を踏み入れる。
「すごい、本格的ですね。わっ、ヘッドアップ・ディスプレイまである」
思わず呟くと、ああ、とスタッフは苦笑いした。
「実はこのハッド、まだ形だけなんです」
「そうなんですね。でも本当にすごいです。ねえ? 舞」
恵真と手を繋いだまま、舞も圧倒されたようにたくさんのスイッチや計器類を見渡している。
「すごいね、ほんとうのひこうきみたい」
「じゃあ、舞はこっちに座って見ててね」
「うん。おかあさん、ほんとにとぶの?」
「ほんとには飛ばないけど、飛んでるみたいな気分になるわよ。楽しみにしてて」
「わかった。がんばってね!」
「ありがとう!」
舞に微笑むと、恵真は左席に座る。
(えーい、キャプテンでもないのにごめんなさい!)
心の中で詫びると、スタッフの簡単な説明を聞いてから、いよいよスタート。
動き出したリアルな映像に、舞は目を丸くして息を呑んだ。
「うごいた! おかあさんって、ほんとにすごいのね」
「え、そう?」
タキシングだけでこんなに感激されることなどない。
恵真はすっかり気を良くしていた。
「よーし、舞の為にお母さん張り切っちゃうよ」
「うん、がんばって!」
「ではコーパイの舞さん、いよいよ離陸しますよ。Cleared for takeoff」
スラストレバーを押し進め、恵真は実機さながらに「Stabilize」とコールした。
続いてTO/GAスイッチを押すと同時にブレーキをリリース。
ゆっくりと機体が動き出し、オートスロットルのモードが変わるのを確認すると「Thrust Ref」とコール。
目の前に広がる映像は、滑走路の上をどんどん加速していった。
「わあー、すごいすごい!」
舞の興奮も最高潮に達する。
対気速度計が80ノットに達した。
「Eighty」
「V1」
「VR」
コールしながら、恵真はゆっくりと操縦桿を引く。
「舞、飛んだよ」
「わー、とんだとんだ!」
「Positive」
「Gear up」
最後に恵真は、管制官のセリフで締めた。
「J Wing 001. Contact Departure. Good day!」