Good day ! 4【書籍化】
順調に高度を下げ、フライトレベル200が近づくと、このあとの動きを確認する。

「システムノーマルとは言え、火元不明のまま飛び続けるのはリスクがある。羽田へエアターンバックを要求する」

伊沢の言葉に恵真も頷いた。

「了解です。燃料も充分、ETA(到着予定時刻)まで120分です」

フライトレベル200を過ぎると、恵真は管制官とコンタクトを取る。

「Tokyo Control, JW105. Descending two thousand feet per minute, through FL200. Request return to Haneda due to cabin smoke. Non-alerting, precautionary descent in progress.」

『JW105, roger. Turn left heading 090. Descend and maintain FL100. Radar vector for return to Haneda.』

恵真は航法ディスプレイのベクトルを確認しながら応答した。

「Left heading 090, descend and maintain FL100, JW105」

『JW105. Say souls on board and fuel remaining.』

機内の人数と燃料の残量を問われる。

「Souls on board, two-five-five. Fuel remaining, seven-seven decimal five. JW105」

『JW105, roger. Emergency services are standing by.』

交信を終えると、伊沢が確認する。

「よし、ヘディング090でFL100まで。そのまま東京アプローチにハンドオフされたら、優先着陸を要求しよう」
「優先着陸、了解です」

無事にフライトレベル100に達して機体が安定し、コックピットでの酸素マスクも不要となる。
程なくしてキャビンの佐々木から連絡が来た。

『L1佐々木です。お客様の頭上の棚で、充電式ヘアアイロンの発火が確認されました。直ちに消火し、防火バッグに隔離済み。煙は弱まりました』
「承知しました。佐々木さん、本当にありがとうございました」

恵真と伊沢は顔を見合わせてホッと息をついた。

「火元が特定されても、被害が確認出来ていない以上、リスクは変わりない。 ATB続行」

伊沢の言葉に「ATB了解」と答えてから、恵真は佐々木に知らせる。

「佐々木さん、羽田へエアターンバックが決まりました。火元は特定されましたが、安全のため、緊急着陸扱いとなります。このあとPA入れますが、キャビンでのご対応よろしくお願いします」
『ATB承知しました。キャビンはお任せください』
「ありがとうございます、対応助かります」

そのまま恵真は機内アナウンスを入れる。

「副操縦士の藤崎より、皆様へご報告申し上げます。先ほど客室内で煙を確認しましたが、ヘアアイロンのバッテリーからの発火と火元が特定され、即座に消火して防火バッグに隔離いたしました。機内の空気も約3分で完全に入れ替わるように設計されておりますので、ご安心ください。また万全を期すため、当機はこれより羽田空港に引き返すこととなりました。お客様には大変ご迷惑をおかけいたしますことを、心よりお詫び申し上げます。ご理解とご協力を、どうぞよろしくお願いいたします。
Ladies and gentlemen, this is your first officer speaking. Earlier, we detected smoke in the cabin. The source has now been identified and contained. There is no further danger. We will be returning to Haneda Airport as a precaution. Thank you for your understanding.」
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