Good day ! 4【書籍化】
伊沢のラインチェックは、次回に持ち越され、4人はようやく解放される。
明日は急遽オフ、そのあとのスケジュール変更は追って連絡が来るらしい。
「さてと、帰りますか。彩乃も翔一もびっくりするだろうな」
野中が両腕を上げて伸びをしながらそう言うと、伊沢も笑う。
「うちもですよ。こずえにロスのお土産頼まれてたのになあ」
「じゃあ、これからデッドヘッドでロスに飛ぶか?」
「いえ。愛する家族のもとに帰ります」
「だよな。そうしよう」
歩き始めた廊下で、恵真は小さく伊沢に声をかけた。
「ごめんね、伊沢くん。ラインチェックの大事なフライトだったのに、私が一緒に飛んだばっかりに大変なことになって」
なにせ、ハプニングばかり起きる恵真と違って、伊沢のフライトは常に穏やかなものだったから。
「何言ってんの。俺が今回、どれだけ恵真に助けられたか。俺、今日のフライトで恵真がコーパイじゃなくて、佐倉さんも野中さんも一緒にいてくれなかったらと思うとゾッとする。それにすんなり審査をパスしてたら、いざという時に何も出来ない機長になってたと思う。こんな大変なフライトは初めてだったけど、乗り越えられたことが大きな自信になった。ありがとな、恵真」
「伊沢くん……」
すると前を歩いていた野中が振り返る。
「よかったな、伊沢。藤崎ちゃんっていう、最強のコーパイが一緒に飛んでくれてさ。大きな壁を乗り越えられた。これで次のラインチェック落ちたら、さんざん笑ってやる」
「ご心配なく。絶対に受かってみせますよ」
「楽勝で受かれよ?」
「はい!」
「よし。それにしても何が一番驚きって、藤崎ちゃんがまだキャプテンじゃないことだよ」
は?と、恵真は目をしばたたかせた。
「どういう意味ですか? 野中さん」
「だって、あんな肝の据わったコーパイいるかよ? 俺、後ろで聞いてて『Roger!』って敬礼したくなったわ」
「はい? おっしゃる意味が……」
「楽しみだなー、JWA初の女性機長の誕生」
それを聞いて、伊沢が半泣きの表情を浮かべる。
「野中さん、その前に伊沢機長の誕生は楽しみにしてくれないんですか?」
「お前はずっと俺の右側で飛んでてほしいからさ。佐倉、ラインチェック落としてやれ」
「ちょっと! 野中さん!!」
賑やかに言い合う二人を後ろから眺め、恵真と大和は顔を見合わせて笑った。
明日は急遽オフ、そのあとのスケジュール変更は追って連絡が来るらしい。
「さてと、帰りますか。彩乃も翔一もびっくりするだろうな」
野中が両腕を上げて伸びをしながらそう言うと、伊沢も笑う。
「うちもですよ。こずえにロスのお土産頼まれてたのになあ」
「じゃあ、これからデッドヘッドでロスに飛ぶか?」
「いえ。愛する家族のもとに帰ります」
「だよな。そうしよう」
歩き始めた廊下で、恵真は小さく伊沢に声をかけた。
「ごめんね、伊沢くん。ラインチェックの大事なフライトだったのに、私が一緒に飛んだばっかりに大変なことになって」
なにせ、ハプニングばかり起きる恵真と違って、伊沢のフライトは常に穏やかなものだったから。
「何言ってんの。俺が今回、どれだけ恵真に助けられたか。俺、今日のフライトで恵真がコーパイじゃなくて、佐倉さんも野中さんも一緒にいてくれなかったらと思うとゾッとする。それにすんなり審査をパスしてたら、いざという時に何も出来ない機長になってたと思う。こんな大変なフライトは初めてだったけど、乗り越えられたことが大きな自信になった。ありがとな、恵真」
「伊沢くん……」
すると前を歩いていた野中が振り返る。
「よかったな、伊沢。藤崎ちゃんっていう、最強のコーパイが一緒に飛んでくれてさ。大きな壁を乗り越えられた。これで次のラインチェック落ちたら、さんざん笑ってやる」
「ご心配なく。絶対に受かってみせますよ」
「楽勝で受かれよ?」
「はい!」
「よし。それにしても何が一番驚きって、藤崎ちゃんがまだキャプテンじゃないことだよ」
は?と、恵真は目をしばたたかせた。
「どういう意味ですか? 野中さん」
「だって、あんな肝の据わったコーパイいるかよ? 俺、後ろで聞いてて『Roger!』って敬礼したくなったわ」
「はい? おっしゃる意味が……」
「楽しみだなー、JWA初の女性機長の誕生」
それを聞いて、伊沢が半泣きの表情を浮かべる。
「野中さん、その前に伊沢機長の誕生は楽しみにしてくれないんですか?」
「お前はずっと俺の右側で飛んでてほしいからさ。佐倉、ラインチェック落としてやれ」
「ちょっと! 野中さん!!」
賑やかに言い合う二人を後ろから眺め、恵真と大和は顔を見合わせて笑った。