Good day ! 4【書籍化】
5月のゴールデンウィークの繁忙期を過ぎた頃、恵真と彩乃とこずえは、3家族一緒のバーベキューを企画した。
恵真と大和のマンションの共用施設のガーデンを予約し、青空の下、ウッドデッキで子どもたちは楽しくおしゃべりする。
大和も野中も伊沢も午前中にフライトがあり、夕方から合流することになっていた。

「子どもたち、受験前の息抜きになるといいわね」

オープンテラスのキッチンで野菜を切りながら、彩乃が言う。

「ええ、ほんと。翔一くんも、勉強行き詰まってない?」
「今のところはね。やる気がみなぎってる感じ。ちゃんとパイロットの勉強してるみたいよ、パイレーツじゃなくてね」

そう言って、保育園の卒園式のことを思い出したように笑った。

「翼くんも翔一くんも、その上舞ちゃんもパイロットか。美羽だけ違うなあ」

ざくざくとキャベツを切りながらこずえが呟く。

「美羽ちゃん、将来なにになりたいの?」

彩乃が聞くと、こずえは顔を上げ、ウッドデッキのベンチで舞と並んでおしゃべりしている高校2年生の美羽に目をやった。

「あの子ね、CAさんになりたいんだって」

へえー!と、彩乃も恵真も声を上げる。

「いいじゃない。美羽ちゃんらしいわ」
「うんうん。明るくて可愛くて、笑顔も素敵だもんね、美羽ちゃん」

うん、でもね……、とこずえは少し言い淀んだ。

「私、ちょっと憧れてたんだ。親子でパイロットっていうのに。だけど美羽の人生だもんね。ちゃんと応援してあげなきゃ」

寂しそうにぽつりと言ってから、こずえは気持ちを入れ替えるように顔を上げて笑う。

「パパがさ、もう大喜び。美羽がコックピットにコーヒー持って来てくれる日が楽しみで仕方ないんだって」
「じゃあ美羽ちゃんも、JWAに入るってこと?」
「うん、それを目指してる。ブルーの制服が可愛いからってさ。私の会社の制服は黒だから、気に入らないらしい。まったくもう、動機が不純よね」
「ううん、美羽ちゃんならきっと採用されるよ。だって想像つくもん、にこにこ明るいCAの制服姿の美羽ちゃん」
「だといいけどね。高校卒業したら専門学校に行って、そこから入社試験受けるんだって」

ってことは、と恵真と彩乃は頭の中で計算する。

「ひょっとして、子どもたちみんな同じ年にJWAに入社するかもしれないってこと?」
「ああ、そうなるのか。うわー、なんだか楽しそうでいいわね、あの子たち」

ほんとほんと、と3人で子どもたちに目を向ける。
明るくじゃれ合っている翼と翔一。
顔を寄せ合って、何やら楽しそうに内緒話をしている舞と美羽。
4人が仲良く大きくなったことが、なによりも嬉しい。

「私たち、家族ぐるみで長いおつき合いになりそうね。これからもよろしくね」

彩乃が笑いかけ、恵真もこずえも「こちらこそ」と笑顔で頷いた。
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