Good day ! 4【書籍化】
「おめでとう!」

恵真たちのマンションのパーティールームで、3家族が集まってのお祝いのパーティー。
無事に航空大学校への合格を勝ち取った翼、舞、そして翔一は、にぎやかに皆の祝福を受けていた。

「まずは大きな一歩を踏み出したな。いよいよこれからが始まりだ。しっかりな、翔一」

野中の言葉に、翔一は大きく頷く。

「でも翼くんも舞ちゃんも一緒だから、すごく安心で心強いわ。よろしくね」
「こちらこそ。しかも3人とも同じⅠ期生で、本当によかった」

彩乃と恵真も笑顔で言葉を交わした。

航空大学校は、飛行機操縦科に合格した108名を4つのグループに分けて、授業を開始する。
翼たち3人は、6月から始まるⅠ期生となった。
まずは宮崎で学科課程を5ヶ月、そのあと帯広でフライト課程を5ヶ月。
そして再び宮崎に戻ってフライト課程を7ヶ月、最後に仙台フライト課程を7ヶ月の、合計24ヶ月に渡って学ぶことになる。
授業が始まれば寮生活に入るが、3人一緒ならきっと大丈夫。
互いに励まし合いながら、厳しい訓練を乗り超えていけるだろう。

子どもたちに目を向けると、美羽も交えて楽しそうにおしゃべりしている。

「私も絶対CAになってみせるからね。みんなと同じ年に入社になるかも?」
「そうなんだ! 楽しみ」
「うん、がんばろうね!」

目をキラキラさせた子どもたちは、夢と希望に溢れていた。

「なんか、初心忘るべからずだね。私も思い出しちゃった、純粋だった頃の自分を」
「やだ、こずえさんったら。今も純粋でしょ?」
「いやー、薄汚れてきちゃったわ。見てよ、あの子たちの笑顔。うっ、まぶしくて直視出来ない」

あはは!と彩乃がおかしそうに笑う。
恵真はぽつりと呟いた。

「なんだか子育てって、人生をやり直してる感じがする。もう一度子どもの頃からの体験をなぞってるみたいな」

こずえと彩乃も頷く。

「それ、なんとなく分かる。疑似体験っていうか、青春時代の思い出を呼び起こされるというか」 
「うんうん。当時は実感湧かなかったけど、今ならこう思える。あの時の自分は、キラキラ輝く貴重な青春時代を過ごしていたんだなって」 
「本当に」

3人でしみじみとその思いを噛みしめる。

「あの子たちに負けないように、私たちも第2の青春時代を楽しみましょ!」
「え、もう若さも体力もないわよ?」
「そこは経験値と大人の美貌でカバーよ」
「経験値はともかく、美貌は……」
「いいの! 大事なのは内面の美しさよ。こずえさんなんて、妖艶な女性の魅力に溢れてるもの」
「やだー! 彩乃さん、なんてこと言うのよ。でも嬉しい。ふふん、私もまだまだこれからだもんね」
「そうそう!」

盛り上がる二人に、恵真もつられて笑った。
大和たちに目を向ければ、野中や伊沢と共に楽しそうに話をしている。

(大和さん、いつ見てもかっこいい。ますます男性の魅力に磨きがかかった感じがするし、いつも頼もしくて温かい。私も大和さんにつり合う女性でいたいな)

するとこずえが恵真の顔を覗き込んだ。

「おやおや恵真さん、目がハートになってますけど? 大和さんに恋しちゃってるでしょ」
「ちょ、こずえちゃんたら!」
「だってほんとだもーん。いいわね、いつまでもラブラブで」
「こずえちゃん! 子どもたちに聞こえちゃうって」

あら、いいじゃない、と彩乃も笑いかける。

「いつまでも両親が仲いいって、子どもたちにとっては最高の環境よ。見せつけちゃえー」
「もう彩乃さんまで。恥ずかしいから」

必死に止めていると、ふと大和が顔を上げてこちらを見た。

「恵真」
「は、はい!」
「みんなでこっちで話さないか」
「そ、そうですね。はい」

ギクシャクと答える恵真に、こずえと彩乃が笑い出す。

「では、愛する旦那様のもとへ行きましょうか」
「そうね。ほら、恵真さんも」

彩乃に背中を押されて、恵真は顔を赤らめたまま大和のそばへ向かった。
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