蛍火のような恋だった
夏祭りのざわめきが次第に遠ざかり、提灯の明かりも見えなくなる。
耳に届くのは、草を揺らす風の音と、遠くの虫の声だけ。
やがて川沿いに出ると、目の前に広がる景色に息をのんだ。
「わあ…」
暗い水面の上を、小さな光がふわりふわりと舞っていた。
星が地上に降りてきたみたいに、ホタルの光があたりを淡く照らす。
「ここ、ホタルが沢山飛ぶんだ。これを蛍に見せたくて」
凪くんの声は静かで、でもどこか熱を帯びていた。
草の上に並んで腰を下ろすと、夜風がすっと頬を撫でていく。
と、淡い光がひとつ、こちらに向かって飛んでくる。
私はそっと指を伸ばすと、ホタルが一匹、指先に止まった。
「ゲンジボタルだ…」
「詳しいんだな」
「小さい頃よく見てた図鑑に載ってたから」
指先に止まったホタルが、ふわりと光を揺らしながら飛び立つ。
このホタルたちも、ほんの短い命を精一杯光らせて、最期を迎える。
私も、そんな風に過ごしたい。
限られた時間の中で、凪くんと過ごすこの瞬間を、精一杯輝かせたいーー