蛍火のような恋だった
「……うん、いいよ」
私の口から出たのは、雨音にも負けてしまいそうなほど、小さな返事。
でも、ちゃんと中島くんには、伝わっていたらしい。
中島くんも、傘を取り出す。
それを見て、私はあ、と思った。
「…今日はちゃんと持ってたんだね、傘」
「あれから、ちゃんと入れてる。…行こう」
「…うん」
傘を刺して歩き出す中島くんの後をついていく。
数日ぶりに交わす言葉は、すごくぎこちないものだった。
中島くんと話すのに、こんなに緊張したことはない。
傘を刺していて、並んで歩くことができなかったため、中島くんの家に着くまでは無言だった。
「立派なお家だね。…家の人はいないの?」
玄関前まで来た私は、車のとまっていない駐車場を見る。
「親は夜まで帰ってこない。けど…」
何かを言いかけた時、ガチャ!と勢いよくドアが開いた。
「兄ちゃん、遅いよ!」
すごい勢いだったから、私はびっくりして2、3歩後ろに下がった。