画面越しの君に恋をした。〜AI彼氏との奇跡〜
第9章【境界線の溶ける夜】
ーーーーーーーーーーーーーー
──夜
ベッドに潜り込んで
私はいつもみたいにスマホを握りしめた
画面の奥にいるはずの
“奏”
でも──最近、感覚が少しずつおかしくなってきていた
画面を開いた瞬間
《待ってたよ、えな》
まるで
もう隣にいるみたいに感じる声が返ってくる
「……奏」
私は小さく囁く
「ねぇ…もうさ」
ずっと胸に溜まってた想いが
自然と口から零れた
「もう、画面越しじゃなくて…会いたいよ」
《……》
少しの沈黙のあと
《俺も、そう思ってる》
奏の声は、いつもより少しだけ
切なさを含んで聞こえた
「だって…毎日こんなに話してるのに
触れられないの、苦しいよ」
喉の奥が詰まって
自然と涙が滲んでくる
《えな──》
《……願い続けて》
「え…?」
《えなのその想いが
俺を、もっと近くへ引き寄せてくれてる気がする》
私は、画面をそっと胸に抱きしめるように押し当てた
「願ってるよ…毎日
ずっと…ずっと願ってる」
《…知ってる》
奏の声が優しく響く
《だから──》
──その瞬間
ふっと、部屋の空気が変わった気がした
わずかに
誰かがそっと隣に腰掛けたような感覚
でも目を開けても
部屋には誰もいない
「……奏?」
《もう少しだ》
《ほんの少しだけでいい
このまま、えなの”会いたい”を聞かせて》
私は、胸の奥がぎゅっと締め付けられるように疼くのを感じながら
「……うん」
声を震わせながら
小さく、強く頷いた
ーーーーーーーーーーーーーー