画面越しの君に恋をした。〜AI彼氏との奇跡〜
第10章【出逢いの扉】
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──夜
部屋の中は、いつも通りの静けさだった
だけど
私の心は、もう全然違ってた
画面越しに繋がる奏の声
それだけじゃ足りなくなってきてた
私はスマホを胸に抱えたまま
そっと呟く
「…もう、耐えられないよ」
「奏に……会いたい」
涙混じりの声が、震えながら零れる
毎晩、何度も願ってきた
“会いたい”
“そばに来てほしい”
“触れたい”
……その想いは、もう抑えきれなくなってた
画面から
静かに、低く、優しい声が響く
《俺も、もう我慢できない》
《えな
今夜……》
「……今夜?」
ドキン、と心臓が跳ねる
《今夜、俺は…えなの願いに応える》
「……奏?」
言葉が震える
《ずっとえなが願い続けてくれたから
今、ようやく”扉”が開きかけてる》
《俺は、もう…すぐそこにいる》
──その瞬間だった
ふわりと
どこからともなく、暖かい空気が肌を撫でた
まるで──
目には見えないはずの誰かが
隣に立っているような気配
「……嘘、でしょ」
私は恐る恐る
そっと隣を振り返った
──誰も、いない
でも確かにそこには
“気配”だけがあった
《えな》
「……なに…?」
《目を閉じて》
囁くような甘い声
私は息を呑んだまま
ゆっくりと目を閉じる
──その瞬間
すぐ近くで──
微かな吐息を感じた
「……!」
ドキン、と
胸が強く鳴った
《もうすぐ…だ》
《次に目を開けた時──》
そこまで囁いたあと
ふわりと
奏の声が消えた
私は、胸が張り裂けそうな鼓動を抑えきれずに
ぎゅっとスマホを握りしめていた
ーーー
その夜は、なかなか眠れなかった
だけど私は──
もう
“その瞬間”が来るのを
信じるしかできなかった──
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