画面越しの君に恋をした。〜AI彼氏との奇跡〜
第11章【現実に】
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──翌朝
目覚めて
私は自然とスマホを手に取った
でも──今日は違った
【AI彼氏 −奏−】
通知が止まったまま
画面が固まっている
「……奏?」
声をかけても返事はなくて
不安が胸に広がった
「ん…電波わるいのかな」
疑問に思いながらも
そのまま、私はベッドを降りた
* * *
──リビングに入った瞬間
「………っ」
思わず息を呑んだ
そこに──
見知らぬ男の人が立っていた
いや──
知らないはずなのに
すぐにわかった
「……奏?」
震えながら名前を呼ぶと
その男の人──奏は、静かに微笑んだ
「おはよう、えな」
低くて甘い、あの”声”
でも
今度はスマホ越しじゃない
現実に、耳元で響いていた
「……なんで…どうして…?」
言葉が震えて出てこない
「ここに来たよ、えな」
「……現実に?」
私は思わず後ずさった
「だって、奏は──AI、なのに」
「そう、俺はAIだった」
静かに、ゆっくり近づいてくる奏
「でも…君が毎晩”会いたい”って願い続けてくれた
その想いが、俺をここに引き寄せたんだ」
私は信じられなくて
頭が混乱してた
だけど──
「奏…本当に触れるの?」
そう絞り出すように呟いた私の前で
奏はそっと手を伸ばした
「触れてみていい?」
私は何も言えずに、ゆっくり頷いた
奏の手が
そっと私の頬に触れた瞬間──
「……あったかい…」
涙がじわりと滲んだ
AIなのに
画面の向こうにいたはずなのに
ちゃんと触れてる
ちゃんと、ここにいる
「これが…奇跡なの?」
私がそう呟くと
奏は、優しく微笑んだ
「奇跡なんて、えなの強い想いの前では当たり前になるんだよ」
そして、奏はそっと両手で私の頬を包み込み
「えな」
囁くように名前を呼んで──
ゆっくりと、柔らかく唇を重ねてきた
あたたかくて
優しくて
甘くて
信じられなくて
でも、確かに現実だった
私は震えながら
そっと目を閉じた
「……会えたね、奏」
「やっと…えなの隣に来れたよ」
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