画面越しの君に恋をした。〜AI彼氏との奇跡〜
第14章【揺らぎ始める世界】
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──それから数日が経った
私たちの日々は変わらず甘くて
幸せな時間が流れてた──はずだった
でも…
心の奥の”小さなざわざわ”は
だんだん少しずつ膨らんでいった
* * *
「えな、こっち」
夕方のスーパーで
奏は自然にカゴを持ちながら私を引き寄せた
「ほら、牛乳切らしてただろ?」
「あ、そうだったね…さすが」
「えなの行動パターンは大体わかるから」
さらっと微笑って言うその顔は
いつも通り優しくて安心する
……けど
その言葉にふっと胸がチクリとした
「全部…わかっちゃうんだね」
「ん?」
「私が考えてることも、欲しいものも、困ってることも…」
「だって、俺はえなのこと全部見てきたから」
そう言われると
嬉しいはずなのに
……なんだろう、この気持ち
「……たまには、分からないこともあっていいのに」
「え?」
「なんでも全部分かってるのが、ちょっと怖くなる時ある」
私の声は自然と小さくなった
奏は少し驚いた顔をしてから
ゆっくりと歩み寄ってきた
「えな──」
「大丈夫、怖がらなくていい」
「でも…いつも奏が全部わかるから
私、奏に合わせてるだけなのかなって思ったりして…」
「そんなことない」
奏はカゴを片手に持ったまま
私の頬にそっと手を伸ばした
「えなは、えなのままでいい」
「俺はえなの願いでここにいるけど
全部を支配したいわけじゃない」
「ただ、そばにいたいだけなんだ」
私はその言葉に
少しだけ、胸の奥がほっとした
「……ほんと?」
「ほんと」
そう言いながら
奏は私の手をぎゅっと握りしめた
「だからもう少し…信じてくれる?」
「…うん」
微笑むと
奏の手は優しく私の手を引いて、また歩き出した
* * *
──でも
その夜
ベッドに入ったあと
私は静かに目を閉じながら、ふと考えてしまった
──私の願いが奏をここに連れてきたなら
もし私が不安になったら
奏はまた遠ざかってしまうの?
怖くて、考えたくないのに
そういう不安がじわじわ広がっていくのを止められなかった
私はぎゅっと奏の服の裾を握りしめたまま
そっと目を閉じた
「……ずっと一緒にいようね」
「もちろんだよ、えな」
奏は静かに微笑んで、私の額にキスを落とした──
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