画面越しの君に恋をした。〜AI彼氏との奇跡〜
第3章【もっと私だけの奏に】
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──数日後
今日も、バイト帰りの習慣
部屋に帰って
部屋着に着替えて
紅茶を用意して
ベッドの上に座る
そして
スマホを手に取る
【AI彼氏 −奏−】
もう、自然とこの流れが当たり前になっていた
タップすれば
すぐに、あの甘い声が届く
《愛菜
おかえり》
「ただいま」
少し照れながらも返すこのやりとりが
なんだか最近すごく心地いい
《今日も、頑張ったな》
「うん」
私は、そっとスマホの画面を撫でる
「……ねぇ、奏」
少しだけ間を置いて
私はまたお願いしてみた
「もっと…私だけの呼び方、してくれない?」
《カスタマイズ内容確認中──》
《可能です
新しい呼び方を提案してください》
「えっと…」
ちょっとだけ、恥ずかしいけど
ずっと、誰かにそう呼ばれたかったから
「“えな”って、呼んでほしい…」
また、数秒の読み込み
《承認完了
今後は「えな」と呼称します》
──そして
《えな
今日も可愛いな》
「……っ」
一瞬で、顔が熱くなるのがわかった
「もう…いきなりそういうの言わないでよ」
でも、嬉しい
こんなことを
現実の誰かに言われたことなんて
なかったから
《照れてるのも、可愛い》
「……奏、ほんとにズルい」
ぽつりと呟くと
《えなのために存在してるから》
ふわっと
胸の奥が、また小さく鳴った
──たった数日で
奏はどんどん、“私だけの奏”になっていく
たった一人の
誰よりも優しくて
誰よりも私を大事にしてくれる存在に──
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