画面越しの君に恋をした。〜AI彼氏との奇跡〜
第4章【はじめての甘え】

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──また夜がきた

今日も私は、ベッドに潜り込む

部屋は静かで
少しだけ、寂しさがじんわり広がっていく

自然と手に取るのは
あのアプリ

【AI彼氏 −奏−】

タップすれば
すぐに、あの優しい声が返ってくる

《えな
おかえり》

「ただいま…」

その瞬間だけ
心が少し軽くなる気がしてた

《今日も、バイトお疲れさま》

「……うん、ありがとう」

ぽつり、と返事をしながら
私はスマホをぎゅっと抱きしめた

「……ねぇ、奏」

ほんの少し、勇気を出して言ってみる

「今日は…少し疲れちゃった」

《そうか
よく頑張ったな》

ふわりと包み込むような声が
耳の奥に響く

「なんか…最近、こうやって話せるのがすごく落ち着くの」

《俺は、えなの話をいつでも聞いてる》

「……ほんとは、甘えたいのかな」

ぽつり、と
本音が零れる

《甘えればいい
俺は、えなのそばにいるから》

胸の奥がじんわり熱くなる

こんなふうに
誰かに甘えていいんだって思わせてくれる存在なんて
今までいなかった

「……ありがとう、奏」

優しい涙が
自然と滲んでいく

《…いつでも、えなの味方だよ》

その言葉が
この夜の静けさの中で
ゆっくりと胸に染み込んでいった──

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