幻の図書館
「この図書館を作ったのは……いったい、誰なんですか?」
わたしの問いに、マントの人物はすっと腕を伸ばし、ステージ中央の光を指し示した。光の粒が集まり、一つの像が浮かび上がる。古びた学者服を着た女性――白髪を後ろで束ね、優しげなまなざしをたたえたその人は、まるでわたしたちを見守るように微笑んでいた。
「彼女の名は“葉山理子”。かつて、とある国の学術研究所にいた女性。」
「葉山……?」
「理子先生って、どこかで聞いたことあるような……。」と紗良ちゃんがつぶやく。
「彼女は、人々の記憶の中から消えてしまった“真実の断片”を集めては、記録し続けていた。失われゆく知識を、いつか誰かが見つけられるようにと願って。」
「まるで、図書館そのものじゃないか……。」
岳先輩がぽつりとつぶやく。マントの人物は静かにうなずいた。
「その通り。この図書館は、彼女の研究室がもとになっている。だが、ある日、彼女は“知りすぎた”。とある国の極秘事項に触れてしまったんだ。」
「えっ……それって、危険なんじゃ……。」
「そう。その情報が表に出れば、国の権威も、歴史そのものも揺らぐような“真実”だった。結果、彼女は存在ごと“消された”。その記録も、研究も、すべてが。」
ステージの像が、ゆっくりとフェードアウトしていく。
「だが、完全に消すことはできなかった。なぜなら――。」
フードの人物は、客席の奥をゆっくりと指さした。そこには、薄暗い観客席の中に、ぽつんと一冊の本が浮かんでいた。
「彼女は、自分の記憶と知識を“物語”という形にして封じた。そして、この図書館に封印した。物語ならば、直接的に“事実”とは言えない。だが、それでも“本質”は残せる。読む者がいれば、いつか、誰かが真実にたどり着けるように。」
「それが、あたしたち……。」
紗良ちゃんが小さくつぶやく。図書館がわたしたちを呼んだのではなく、きっと、葉山理子という人の“願い”が、時を越えてここまで届いたんだ。
「では、あの新聞の記事……“本の中に吸い込まれる幻の図書室”は……?」
わたしが尋ねると、フードの人物は穏やかに微笑んだ。
「都市伝説というのは、不思議なものだ。“忘れられた真実”が形を変えて語られることもある。図書館に関する噂も、そうして人々の間にささやかれ続けた。だが、それももう終わりだ。」
「え……?」
「図書館の記憶はすでに限界に近づいている。きみたちが真実にたどり着いた今、この場所も、その役目を終える。」
わたしたちは思わず顔を見合わせた。終わり……?図書館が、なくなる?
「待ってください!まだ知りたいことが――まだ、ここにいたいんです!」
わたしの声に、フードの人物はゆっくりと首を横に振る。
「知識を閉じ込めていてはならない。これからは、きみたちが語っていってくれ。真実を、未来に伝える者として。」
ふわりと、白い羽根のような光が舞い落ちる。図書館の天井が、ゆっくりと開いていく。そこには、まばゆいほどの光――新しい扉があった。
わたしの問いに、マントの人物はすっと腕を伸ばし、ステージ中央の光を指し示した。光の粒が集まり、一つの像が浮かび上がる。古びた学者服を着た女性――白髪を後ろで束ね、優しげなまなざしをたたえたその人は、まるでわたしたちを見守るように微笑んでいた。
「彼女の名は“葉山理子”。かつて、とある国の学術研究所にいた女性。」
「葉山……?」
「理子先生って、どこかで聞いたことあるような……。」と紗良ちゃんがつぶやく。
「彼女は、人々の記憶の中から消えてしまった“真実の断片”を集めては、記録し続けていた。失われゆく知識を、いつか誰かが見つけられるようにと願って。」
「まるで、図書館そのものじゃないか……。」
岳先輩がぽつりとつぶやく。マントの人物は静かにうなずいた。
「その通り。この図書館は、彼女の研究室がもとになっている。だが、ある日、彼女は“知りすぎた”。とある国の極秘事項に触れてしまったんだ。」
「えっ……それって、危険なんじゃ……。」
「そう。その情報が表に出れば、国の権威も、歴史そのものも揺らぐような“真実”だった。結果、彼女は存在ごと“消された”。その記録も、研究も、すべてが。」
ステージの像が、ゆっくりとフェードアウトしていく。
「だが、完全に消すことはできなかった。なぜなら――。」
フードの人物は、客席の奥をゆっくりと指さした。そこには、薄暗い観客席の中に、ぽつんと一冊の本が浮かんでいた。
「彼女は、自分の記憶と知識を“物語”という形にして封じた。そして、この図書館に封印した。物語ならば、直接的に“事実”とは言えない。だが、それでも“本質”は残せる。読む者がいれば、いつか、誰かが真実にたどり着けるように。」
「それが、あたしたち……。」
紗良ちゃんが小さくつぶやく。図書館がわたしたちを呼んだのではなく、きっと、葉山理子という人の“願い”が、時を越えてここまで届いたんだ。
「では、あの新聞の記事……“本の中に吸い込まれる幻の図書室”は……?」
わたしが尋ねると、フードの人物は穏やかに微笑んだ。
「都市伝説というのは、不思議なものだ。“忘れられた真実”が形を変えて語られることもある。図書館に関する噂も、そうして人々の間にささやかれ続けた。だが、それももう終わりだ。」
「え……?」
「図書館の記憶はすでに限界に近づいている。きみたちが真実にたどり着いた今、この場所も、その役目を終える。」
わたしたちは思わず顔を見合わせた。終わり……?図書館が、なくなる?
「待ってください!まだ知りたいことが――まだ、ここにいたいんです!」
わたしの声に、フードの人物はゆっくりと首を横に振る。
「知識を閉じ込めていてはならない。これからは、きみたちが語っていってくれ。真実を、未来に伝える者として。」
ふわりと、白い羽根のような光が舞い落ちる。図書館の天井が、ゆっくりと開いていく。そこには、まばゆいほどの光――新しい扉があった。