幼なじみに溺れました

積もる視線とざわめき


ーーー



 

日に日に空気はじわじわ重たくなっていった

教室のあちこちで女子たちの視線を感じるのはもう当たり前になっていた

 

「おはよ」

 

朝 教室に入った瞬間にまた女子たちのヒソヒソが耳に入る

 

「今日も凛ちゃんと話すのかな」

「また隣座ってんじゃん」

「いい加減しつこいよね」

 

わざとらしい声のトーンが胸に刺さる

でももう反応しないことに慣れてきてしまっていた

 

「おはよ」

沙耶がそっと声をかけてきた

「また始まってるけど 気にしない気にしない」

「うん…」

 

席に座るとすぐに隣から声が飛んできた

 

「おはよ」

 

「…おはよう」

 

凪は相変わらず普通に話しかけてくる

この距離感にも慣れたようでまだ慣れてないようで

毎朝心臓の動きがバラバラになる

 

「お前最近疲れてね?」

 

「別に」

 

「女子たちのせい?」

 

「違うってば」

 

「無理してんのバレバレだぞ」

 

余裕のある口調でまた見透かすような目を向けてくる

それがまたムカついた

 

「だいたいさ 凪が絡んでくるからでしょ」

 

「それな」

 

「…は?」

 

「俺が原因なのは間違いねーけど まあ面白いしな」

 

「ほんと性格悪い」

 

「褒め言葉?」

 

凪はニヤっと笑って机に肘を乗せたままこちらをじっと見続けていた

 

そんな時だった

休み時間 女子たちの集団がまたわざとらしく近づいてきた

 

「凛ちゃんさ」

リーダー格っぽい子が声をかけてくる

 

「最近なぎくんと仲いいみたいだけどさ」

 

「…別に仲良くなんかしてないけど」

 

「でもさ」

その子がわざとらしく笑った

 

「なぎくん 彼女作る気ないって有名だから あんまり期待しない方がいいよ?」

 

「は?期待なんてしてないけど」

 

「そう?じゃあ安心だね」

 

後ろで他の子たちがクスクス笑ってるのがわかった

 

「それにさ」

今度はもう一人が口を挟んでくる

 

「凛ちゃん ちょっと男慣れしてなさそうだからさ 勘違いしない方がいいと思って」

 

「…っ」

 

何も言い返せなかった

ただ無理に平然を装って笑うしかなかった

 

「じゃあね」

 

女子たちはそのまま笑いながら去っていった

沙耶がすぐ駆け寄ってきた

 

「凛 大丈夫?」

 

「平気」

 

「完全に嫌味言われてんじゃん…」

 

「…もう慣れたよ そういうの」

 

でも本当は

全然平気なんかじゃなかった

 

放課後 教室を出ようとするとまた凪が隣に並ぶように歩いてきた

 

「さっきの 聞こえてたけど」

 

「……別に気にしてないって」

 

「嘘つけ」

 

「ほんとに気にしてないから」

 

「……」

 

凪は少しだけ間を置いて

でも結局またいつもの軽い笑顔に戻る

 

「ならいいけど」

 

「…なにそれ」

 

「お前が無理してんなら止めた方がいいのかと思って」

 

「別に無理なんかしてない」

 

「そう」

 

何度もこうやってやり取りしてるうちに
いつの間にか放課後二人で歩くのが当たり前みたいになっていた

 

(ほんと 意味わかんない)

 

イライラしてるのに

また心臓が跳ねる

 

ーーー

 
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