幼なじみに溺れました
記憶の系
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放課後の帰り道
今日はいつもより少し遠回りして商店街を歩いていた
ふと目に入った古びた駄菓子屋を見上げて
凛は足を止めた
「…なんか 懐かしい」
凪が横から覗き込む
「ん?懐かしい?」
「うん…子供の頃 よく来てたんだよね ここ」
「おばあちゃんがやってたんだ」
すると凪が 少しだけ間を置いてぽつりと呟く
「小さい頃…俺もよくここ来てた」
「え?」
「まだ引っ越す前な」
(引っ越す前…?)
(この町にいたの?)
凪はふっと笑ったまま続ける
「ここで毎回 駄菓子取り合いしてたわ」
「…取り合い?」
「勝手に俺の取ったやつ奪う女がいてさ」
「結局 最後は毎回譲ってやってたけど」
その瞬間
凛の中で ふわっと昔の光景が蘇る
(……それって)
(いやまさか ね…)
ドクンと心臓が跳ねる
頭では「そんな偶然…」と思いながらも
胸の奥で違和感が静かに膨らみ始めていた
凪は そんな凛の反応を
じっと静かに見つめていた
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