幼なじみに溺れました

安心と不安の隙間


ーーー


 

次の週

凛の心は少しずつ落ち着いていた

教室での女子たちのヒソヒソ話も前よりは減った

先輩も以前ほどしつこく絡んでこなくなった

 

ようやく…ほんの少しだけ安心できる日々が続いていた

 

そんなある日の放課後

凛は友達と帰り道にコンビニへ寄っていた

店内に入った瞬間

自然と足が止まる

 

(…ん?)

 

奥のドリンクコーナー

そこに見えたのは

凪と…知らない女の子が並んでいる姿だった

 

(……)

 

女の子は凪に何か話しかけて笑っている

凪も いつものように軽く微笑んで返していた

 

(…誰?)

(先輩じゃない…)

(見たことない)

 

胸がズクンと痛む

友達の沙耶が気付いて小声で耳打ちしてきた

 

「凛…あれ」

 

「…うん 見えてる」

 

「行こうか?別の店に」

 

「…平気」

 

「ほんとに?」

 

「…うん」

 

気にしてないふりをして店を出る

でも胸の中はまたぐちゃぐちゃになっていた

 

(なんで…)

(誰…?)

(また…?)

 

家に帰ってもスマホを握りしめたまま何度もLINEを確認してしまう

凪からは いつも通りの「お疲れ」ってだけの短いメッセージが届いていた

 

(何してたかなんて…言わないんだ)

(また私が勝手にモヤモヤするだけ?)

(……苦しい)

 

ベッドに顔を埋めて ひとり小さく息を吐いた

 

ーーー

 

翌朝

教室に入るといつも通り凪は隣にいた

 

「おはよ」

 

「…おはよう」

 

凪は特に何も言わず普通に話しかけてくる

でも
昨日の光景が頭から離れなかった

 

「昨日…誰といたの」

 

「ん?」

 

「コンビニ…」

 

「ああ あれか」

 

凪は少しだけ間を置いてから ゆるく笑った

 

「いとこ」

 

「…え?」

 

「遠くの大学通ってんだけど たまたま帰省してきててさ」

 

「……」

 

「何だよ」

 

「…なんでもない」

 

凪はニヤッともせず

ただ少しだけ柔らかく笑った

 

「お前さ ほんと疑り深ぇな」

 

「だって…」

 

「でも そこも好きだけど」

 

「…っ」

 

顔が一気に熱くなる

思わず俯いたまま言葉を失った

 

(ほんと…ずるい)

(またこうやって…)

(全部 読まれてる)

 

ーーー

 
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