幼なじみに溺れました
第4章
揺れる公然の秘密
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幼馴染だったことに気付いてから数日
凛と凪の距離は完全に変わった
今までみたいな微妙な駆け引きは減って
放課後も自然に隣を歩き
スマホも毎晩当たり前にやり取りして
時々凪は突然頭を撫でてきたり
不意に距離を詰めて囁いたり
(ずるい…ほんとに…)
でもその分
学校内の空気も変わってきていた
ヒソヒソ…ヒソヒソ…
女子たちの噂は再燃し始めていた
「最近さ 凪くんと凛ちゃんやばくない?」
「完全に付き合ってんじゃない?」
「でも正式に付き合ってるって聞いてなくない?」
「凛ちゃんって絶対そういうの狙ってたよね…」
「ほんと計算高いよね」
(…またこれか)
胸の中がズクンと痛んだ
沙耶がそっと寄り添って小声で囁く
「気にすんな」
「うん…」
そんな時だった
例の先輩が久々に教室まで現れた
例の”あの女”だ
「あら 凛ちゃん 久しぶり」
「…こんにちは」
先輩はわざとらしく笑う
「凪くんと最近仲良しみたいね?」
「…まあ」
「でもさ」
「凪くんって彼女できたとは言ってないよね?」
「……」
「凪くんって元々ああいう距離感だし?」
またあの感じだ
じわじわ抉ってくる牽制
「別に…私たちは…」
言いかけたところに
背後から突然凪の声が入った
「俺の彼女だけど」
「……っ!」
先輩もピタッと固まる
教室中の空気が一瞬止まった気がした
「文句ある?」
凪は一切表情を崩さず
ただ静かに笑ったままだった
「…そ、そうなんだ」
先輩は無理やり笑ってそのまま教室を去っていった
一瞬の沈黙
そしてザワザワと再び湧き上がる周囲の視線
(……やば…)
(…これ もう完全に…)
顔が一気に熱くなる
沙耶が小声で囁いた
「…今の凪くん、完全に殺しに来てたね」
「ほんと…ズルい…」
凪は当たり前みたいに隣に座ってきた
「言わねえとウザい奴ら消えねえしな」
「急にそういうこと言わないでよ…」
「嫌だった?」
「…嫌じゃないけど…!」
ニヤッとだけ微笑む凪の横顔を見ながら
心臓がずっと暴れてるのを抑えきれなかった
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