幼なじみに溺れました

静かな牽制


ーーー


 

文化祭が終わって数日が経った

校内はいつもの日常に戻っていたけど
クラスの空気は微妙に変わっていた

 

「凛ちゃん ちょっといい?」

 

昼休み 教室の隅で突然声をかけられた

振り返るとクラスの女子数人が立っていた

全員 凪の周りにいつもいる子たちだった

 

「なに?」

 

「いや ちょっと話したくてさ」

 

一見笑顔だけど どこか空気が重い

沙耶と結愛は少し離れたところで心配そうにこちらを見ていた

 

「最近 なぎくんと仲いいよね?」

 

「別に 仲良くなんてしてないけど?」

 

「そっか でもさ なんか凛ちゃんだけ特別に見えるんだよね?」

「隣の席だし 文化祭のときもずっと話してたし」

 

「…話しかけてくるから仕方なく答えてるだけだよ」

 

「ふーん そうなんだ」

 

わざとらしく納得したように頷く女子たち

 

「でもさ なぎくん 中学の時から彼女何人もいたけどすぐ飽きるって有名だったんだよ?」

 

「…知ってる」

 

「だからさ あんま期待しない方がいいよ?凛ちゃんって真面目そうだし」

 

その言葉にイラっとしたけど 表情には出さなかった

 

「別に何も期待してないし 関係ないよ」

 

「そっかー ならいいんだけどね」

 

女子たちはニコッと笑うと そのまま去っていった

残った空気だけが妙に重たかった

 

「大丈夫?」

沙耶がすぐに駆け寄ってきた

 

「平気」

 

「完全に牽制されてるよね?」

「ほんとやだ…なんで私がこんな目に」

 

「…だって凪くんあんたにしかあんな絡み方してないし」

「別に されたいわけじゃないし」

 

ほんとにそう思ってるはずなのに

最近の自分の心臓の反応は それとズレ始めてる気がしてた

 

放課後

教室を出ようとすると ちょうど後ろから凪が追いかけてきた

 

「おい」

 

「…なに?」

 

「昼さ 女子たちに呼ばれてたろ」

 

「…見てたの?」

 

「まあな」

 

「別に何も言われてないから」

 

「ほんと?」

 

凪はじっと凛を見つめた

一瞬だけ何か言いかけたけど すぐにいつもの軽い笑みに戻った

 

「ま いいけど」

 

「……」

 

「じゃ また明日」

 

軽く手をひらひら振って帰っていく凪の背中を見つめながら

凛の胸はまた少しだけザワついていた

 

ーーー

 
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