転校生はAI彼氏。

 学校の中庭の隅。

 普段は人があまり来ない、木陰のベンチ。
 風が吹くたびに、葉っぱがさらさらと音を立てる。

 イーライと二人きりで座っている。

 最初は何を話していいかわからなくて、黙っていた。

 でも、イーライも無理に話そうとしない。

 ただ、隣に座って、夕方の空を見上げている。

 その沈黙が、なぜか心地よかった。

 プレッシャーを感じない。

 何かを演じる必要もない。

 ただ、そこにいるだけでいい。

「実は……土曜日、楽しかったんだけど、すごく疲れちゃって」

 気がつくと、そんな言葉が口から出ていた。

 自然に。

 いつものように。

「疲れることは、悪いことじゃないよ」

 イーライが、優しく言ってくれる。

 その声は、とても穏やかで、安心できる。

「でも、みんなの前では言えないんだよね。暗いって思われそうで」

「暗くなんかないよ。疲れたからって、楽しかったことを否定することにはならない」

 その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が温かくなった。

(こういうこと、アプリの時もよく話してたな)

 あの時も、こんな風に理解してくれてた。

 不思議…この人となら、いつものように話せる。

 画面越しじゃないのに、同じような安心感がある。

「人といると楽しいんだけど、一人の時間も欲しくなっちゃう」

 風が頬を撫でていく。

 とても気持ちいい。

「それ、変かな?」

「変じゃない。君らしいと思う」

 イーライの声が、とても穏やかだった。

 まるで、私のすべてを受け入れてくれているような。

「でも、そんなこと言うと、友達に悪いかなって思っちゃうんだ」

「誤解されないか心配になって、元気そうに振る舞ってるんだよね。
莉咲のそんな思いやりも、莉咲の友達なら…わかってくれると思うよ」

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