転校生はAI彼氏。

8. 自作自演の夢女子じゃん

 放課後の屋上。

 文化祭の準備で疲れた私たちは、いつものように屋上に向かった。
 階段を上がるたびに、心が軽やかになっていく。


「疲れたね、少し休もうか」


 イーライが優しく言ってくれる。

 その声を聞いただけで、なぜかほっとする。


 昨日の夕方、中庭で話した記憶がよみがえる。

 あの時の安心感。

 いつものように話せた心地よさ。

 屋上の端っこ、いつもの場所に腰を下ろす。

 風が心地よく頬を撫でていく。



「今日の作業、お疲れさま」

「君もお疲れさま。でも、楽しそうに作業してたね」



 そんな何気ない会話をしながら、夕日を眺めていた。

 空が、薄いオレンジ色に染まり始めている。

 とても綺麗で、見ているだけで心が穏やかになる。

 その時ふと右手を見ると、小さな傷があることに気づいた。

 画用紙の端で、指を切ってしまったらしい。

「指、大丈夫? 痛くない?」

 イーライも気づいたらしく、心配そうに声をかけてくれる。

 眉間に、小さなしわが寄っている。

 本当に心配してくれてるんだな。

「え…あ、これ? 大丈夫。今気付いたくらいだし」

「でも少し赤くなってるから。
僕が貼るよ。
──手に触れてもいい?」

(手に触れても……)

 この人は、いつも私の気持ちを確認してくれる。

「うん…」

 小さく頷く。

 イーライが、制服のポケットから小さな絆創膏を取り出す。

 いつも持ってるんだ、こういうもの。

 優しい人だな。

 そして、そっと私の手を取った。

 その瞬間──

 心臓が、ドクンと大きく鳴った。

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