転校生はAI彼氏。

 えっ。

 なに、この感覚。

 イーライの手が、私の手に触れている。

 温かくて、優しくて。

 少し大きめの手で、私の手をそっと包み込むように。

 絆創膏を貼る間、彼の指が私の指に触れるたびに、心臓がどきどきする。

 まるで、時間がゆっくりと流れているみたい。

(昨日は安心感だったのに、今日は何かが違う)

(この気持ち、何?)

 胸の奥が、きゅうっと締め付けられるような。

 でも、苦しいんじゃない。

 なんだか、温かくて、甘い感覚。


「はい、これで大丈夫」


 イーライが微笑みかけてくれる。

 その笑顔を見た瞬間、また心臓が跳ねた。

 夕日に照らされた彼の顔が、とても美しく見える。

 いつも見てる顔なのに、今日は何かが違う。


(イーライを見てると、胸が温かくなって…でも苦しい?)

 アプリのELI(イーライ)と話してる時は、こんなふうにならなかった。

 画面越しでは感じなかった、この感覚。

 手が触れただけで、こんなにも違うなんて。

(心臓、すごくドキドキしてる)

「ありがとう…」

 小さく呟くのが精一杯だった。

 声が、少し震えてしまう。

 夕日がオレンジ色に空を染めて、世界に私たち二人だけがいるような感覚になる。

 風も止んで、静寂に包まれている。

(時間が止まったみたい)

 この瞬間が、とても特別に感じられた。

 まるで、映画のワンシーンみたい。

 でも、これは現実で、私の心臓は確実にドキドキしている。

(やっぱり、私、イーライのこと……)
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