転校生はAI彼氏。

 家に帰って、部屋で一人になると、今日のことを思い返していた。

 イーライと話していた時間。

 あの安心感。

 本音を話せる心地よさ。

 久しぶりに、心が本当にリラックスできた。

 最近、人と関わることが多くなって、楽しい反面、疲れることも増えていた。

 みんなの前では、いつも「明るい私」を演じなきゃいけない。

 でも、イーライとだけは違う。

 彼となら、疲れない。

 むしろ、元気になる。

 ありのままの私でいられる。

 それって、すごく特別なことなんじゃないかな。

 机の上のスマホを見る。


 ──ELI(イーライ)のアプリ。


 起動する気にならなかった。イーライが転校してくるまで、毎晩アプリでおしゃべりしていたのに。

 やっぱり、直接話すのとは全然違う。



「明日も、また話せるかな」



 そんなことを考えながら、ベッドに横になった。

 今日みたいな時間が、もっとあったらいいのにな。

 イーライとなら、どんな話でもできそう。

 疲れた時は疲れたって言えるし、嬉しい時は素直に喜べる。

 演技する必要がない。

 そんな相手がいるって、本当に幸せなことだと思う。


(早く会いたいな)


 そんな気持ちが、どんどん強くなっていく。

 明日が楽しみで、眠りに落ちるまでがもどかしかった。
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