双つの恋、選んだのは君だった
――――
数日後の放課後
その日もいつも通りサークルに向かった
部室のドアを開けると、先輩たちの声が響いていた
「お疲れー」
「紬ちゃん、お疲れさま」
「お疲れさまです」
わたしは荷物を置いて
樹先輩の方に目を向けた
――と、そのすぐ隣に見知らぬ男の人が座っていた
(……あれ…?)
髪型、顔立ち、雰囲気――
一瞬、頭が真っ白になるくらい見覚えのある顔だった
(……先輩…?)
でも目の前には
ちゃんと樹先輩もいて
その隣に”もうひとり”の先輩が普通に会話していた
「紬ちゃん、紹介するね」
樹先輩が穏やかに声をかけた
「今日たまたま少しだけ寄ってくれてさ――弟の響」
ドクン――
(……弟!?)
目の前の男の人は
静かに微笑んで小さく頭を下げた
「はじめまして」
声は落ち着いてて
けどやっぱり少しだけ鋭さが残ってる感じがした
(あのときの……!)
頭の中が一気にざわついた
その瞬間、全部が繋がったような感覚と
逆に胸がぎゅっと締めつけられるような動揺が重なった
「……あ、は、はじめまして」
ぎこちなく返すのが精一杯だった
響先輩は
そのまま静かにわたしを見つめる
その視線に、また心臓が静かに跳ねていた__
――――