双つの恋、選んだのは君だった
第1章

出会いのはじまり

――――


わたし
月城 紬(ゆず)は__

今日から大学生になった

新しい生活
新しい出会い

……正直、少し緊張してた

「……ここで合ってる、よね…」

文芸サークルの部室前

ずっと憧れていたサークル

深呼吸して、扉の前に立つ

____

コンコン……

小さくノックをした

「どうぞ」

優しい声が返ってくる

そっと扉を開けると
何人かの先輩たちが座っていた

その中で__

ふっと、目が止まった

優しそうな男の人が
立ち上がってわたしに近づいてくる

「はじめまして 新入生?」

「あ…はい」

少し声が裏返った

「月城 紬です」

ふわっと微笑まれた

「月城さん、ようこそ。僕は――神楽 樹(いつき)」

やわらかくて
包み込むような声だった

スッと手を差し出されて

少し迷ってから
わたしも手を伸ばす

「よろしく…お願いします」

手が、あたたかかった

「緊張してる? 大丈夫だよ。最初はみんなそうだから。すぐ慣れるからね」

その言葉に
少しだけ肩の力が抜けた

「……ありがとうございます」

自分でもわかるくらい
頬が熱くなってた

樹先輩は優しく微笑んで
席をすすめてくれた

「良かったら、僕の隣どう? わからないことあったら、なんでも聞いて」

「……はい…!」

胸がドキドキしてた

……優しい__

この時のわたしは
まだ知らなかった

ここから先
どれだけ心が揺れていくのかなんて――

――――
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