双つの恋、選んだのは君だった

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次の日の昼休み

学食の席を取ろうと歩いていたときだった

「お前、こっち」

響が先に席を取って手を振っていた

「えっ……一緒に?」

「文句ある?」

自然すぎる流れで横に座らされる

「兄貴はいねぇよ」

響はサラダを食べながら、ふっと目を細める

「なぁ、お前さ」

「……?」

「意識してね?」

「ま、またそれですか…」

わたしが少し俯くと、響は小さく笑った

「顔真っ赤だぞ」

「……も、もう…!」

すると背後から――

「また意地悪してるの?」

樹先輩の声が聞こえてきた

「お疲れさまです…!」

「響、あんまり紬ちゃん困らせるなよ」

「困らせてねぇって。
俺なりに優しくしてやってんの」

「それ、本人が言う?」

樹先輩が小さく苦笑したあと、紬の隣に座る

「紬ちゃん、ほんとに大丈夫?」

優しく気遣われるたびに
また胸がきゅっと鳴る

「だ、大丈夫です…」

(やっぱり先輩……優しい…でも……)

(なんで響くんの時もこんなにドキドキするの…)

わたしの心は
まだ名前のない揺れの中で静かに揺れていた__

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