双つの恋、選んだのは君だった
――――
合宿が決まってからのサークルは
少しだけ賑やかになっていた
「紬ちゃん、準備進んでる?」
樹先輩がふわっと笑いながら声をかけてくる
「はい…!
先輩たちが作ってくれた持ち物リスト、ちゃんと確認してます」
「えらいえらい」
優しく褒められるたびに
毎回、胸が少し熱くなる
部室の中では
先輩たちがわいわいとスケジュール表を広げて話していた
「夜は星空観察だな!」
「肝試しも恒例だろ〜」
「紬ちゃん、肝試し平気?」
「……ちょっとだけ、苦手です…」
「そっか じゃあ、当日は僕が紬ちゃんの隣にいるよ」
樹先輩の優しさに
思わず俯いてしまう
「……はい」
小さく答えるだけで
心臓の音が少し早くなるのがわかった
準備の合間に
ふと樹先輩が声を落とす
「紬ちゃんさ」
「はい…?」
「合宿中、良かったらまた少しだけでも…高校時代の作品の話、聞かせてくれない?」
「……えええ…」
また、その話だった
でも___
これまでよりも
なんとなく”嫌じゃない”と思ってしまった自分がいた
「……すこしだけ…なら」
勇気を振り絞って答える
樹先輩は
ふわっと優しく微笑んでくれた
「楽しみにしてる」
……こうして合宿に向けた準備は
少しずつ進んでいった
ドキドキと緊張と…
ちょっとした期待を胸に抱えながら__
――――