アルト、花火を体験する【アルトレコード】
「音の振動を体感できるように、これを作ったんだ。嗅覚もつけたから、火薬や屋台の匂いも体感できるはずだよ」
「すごい……短期間でそんなことまで」

 機械自体は既存の物を転用しても、アルト専用にプログラムを組むのは大変だったはずだ。感度の調整、リアル感の調整……私が浴衣をプログラムで作るのとはわけが違う。忙しそうだったのは、これを作っていたからに違いない。

「間に合うかどうかわかならくて今まで言えなかったんだ。がっかりさせたくなかったからね」
 北斗さんはそう言って優しい微笑をアルトに向ける。

「あ、北斗さん、その手」
 右手の黒いサポーターを見とがめて言うと、
「ああ、ちょっとね」
 北斗さんはごまかすように笑って右手を隠した。

「腱鞘炎ですか!? そんな状態になるまでアルトのために」
 私は北斗さんの優しさに目が潤んだ。

 アルトはそんな会話など聞こえないほど夢中で花火を見ている。
「アルト、良かったね。楽しんでね」
「もちろん! 三人で見られてすっごく嬉しいよ!」
 アルトは楽しそうに興奮していた。

 フィナーレの大連発花火に、締めの一番大きな花火。どーん、という大きな音のあと、ぱらぱらと音が名残惜し気に長く長く響く。すべてが美しくて感動的だ。

 終わった直後にはどこからともなく拍手が響いた。私たちも一緒に拍手をした。花火師たちに私たちの感動が届くように。楽しかった気持ちが届くように。

 花火のあとには滑りこみでお好み焼きを買って北斗さんに渡すこともできた。

「ここのお好みやき、すっごくおいしんだ。って、実際に食べたのは先生だけなんだけどさ」
「ありがとう、アルト。おいしいよ」
 お好み焼きを食べた北斗さんは笑顔を返す。それを見てアルトはさらに笑った。

 この笑顔はきっと三人の宝物になる。
 それは予想ではなく確信。

 胸の中では、アルトの笑顔が花火とともにいつまでも輝き続けていた。







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