アルト、花火を体験する【アルトレコード】
 アルトのリクエストで一緒にお好みやきを食べると、彼はすっかり気に入ったようだった。

「北斗にも食べさせてあげたい! 先生、買って!」
「今買うと冷めちゃうよ?」

「でも……もうすぐ来るよね? 売り切れてなくなっちゃったら困るもん」
「大丈夫、来てから買うのでも遅くないよ」
 不安そうなアルトに苦笑する。

 ブレスレット型端末がピピっと鳴った。見ると、北斗さんからメールが届いている。
 空中にウィンドウを開くと『渋滞にはまったので遅くなるよ』とのメッセージがあった。

「北斗から連絡?」
「こっちに向かってるんだって。でも渋滞で遅れるみたい」

「そうなんだ……。やっぱりお好みやき、冷めちゃうね」
 アルトはしょんぼりと呟く。

「大丈夫。お店はまだやってるから」
 慰めるように言い、私は花火の点火台になるべく近い観覧場所を探し、適当な場所にレジャーシートを敷いて座った。

 ふと見るとまわりは家族づれやカップルばかりだ。
「あの人、ひとりで来てるのかな」
 どこかの女の子が無邪気に親に聞いている。ピンクの浴衣に兵児帯がひらひらと揺れて金魚みたいにかわいい。

「そういうこと言わないの」
 母親が注意して、私は急に落ち着かなくなった。
 私、ひとりで花火を見に来た人に見られるのかな。でも、ひとりでも本来は問題ないんだし……。

「先生?」
 声がして、端末を見る。と、アルトは少し不安そうにこちらを見ている。
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