本屋のポチ
(けっこう多くなっちゃった)
結局、
私は両手で抱えなければならないほど本を選び出していた。
雑誌、文芸書、新書に文庫。平積みになっている本を中心に選んだ。
本屋は、現在(いま)のトレンドがわかる場所だ。時流や時事や流行などが。
やっとカゴを積んでいる場所にたどりつき、ていねいに本を入れてひと息つく。今夜も眠れなさそうだ。
そう言えば、

最近実家に帰っていないから、そろそろ少し顔を出した方が良いかも知れない。
そんな考えが不意に頭をよぎった。
すっかり白髪の増えた母は、結婚、結婚と口うるさく言うけれど、今は結婚にこだわる時代じゃないし、
好きなことを仕事にして生きて、趣味も休みも充実していたらそれで良いじゃないか。私の人生なんだし。
母にそれを言ったら寝込むかも知れないので言っていないけれど -
ここはひとつ、

母が好きな園芸雑誌と恋愛ものの漫画雑誌でも買って行こうかな。
あとでケーキでも添えれば良い。

人間って、みんな、いつまでも結婚へのあこがれを捨て切れないものなのだろうか。
それとも、永遠に、お姫様・王子様に出会いたい願望でもあるのか?
母のようにとっくに仕事を引退し、父とはつかず離れずの距離を保ち、いつも庭の土いじりで日に焼け、指が節くれていても、なお?
(うちの友だちも結婚して子供いる子多いし、幸せってひとそれぞれだよね)
そんなことを考えながら、

まず、2階ですぐ目についた恋愛漫画の雑誌を1冊カゴに入れ、
それから、1階に降りて園芸雑誌を探す。
月刊誌の発売日は昨日だった。テレビ番組と連動している。
「……」

ない。
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