溺愛の業火
目で「嫌だ」と睨んで私が訴えると、彼は視線を逸らさずに冷たい表情。
まるで「じっくり待ってやる」と言うような沈黙で、私を見つめ続ける。
ムカつく。イラつく。どうして分かってくれないの?
断ったじゃない。
未熟な自分。あなたの感情に追いつけない。
無理、お願いだから分かって欲しいのに。
そんな私の気持ちもお構いなしで……もう限界……
涙が溢れて零れ始めた。
流れ続ける涙で、視界の歪んだ中にいるあなたの表情は分からない。
けれど、摘まんでいた鼻は解放された。
私は酸素を求めて口を開け、悔しさに似たうめきの様な声で泣き崩れた。
そんな私を優しく抱き寄せ、あやすように頭や背中を撫でる。
「お前が俺のものになってくれるなら……」
狡い。優しくしながら、強引な言葉で私を追い詰めていくなんて。
あなたの穏やかな笑顔や、優しい言葉……
思い出せば、その時に自分が抱いた気持ちは理解できたのに。
遅かったのかな。今は、あなたの愛情が怖い。
応えきれないと逃げ腰で。それでも望んでしまう。
私はどうすればいい?
清水くんが抱き寄せる腕の中、寄り添う体は熱を共有して、優しい香りが包む。
逃げられない。逃げたくない。
「俺は、篠崎が好きだ。だけど、この想いが君を追い詰めるなら俺は諦める。ねぇ。俺の事、嫌い?」
清水くんが私への気持ちを諦めると言った。
涙が止まり、私は顔を上げる。
だけど、そこで見たのは清水くんの黒い笑顔。
私の全てを見透かすような眼。
あぁ、続くんだ。
これが流されて辿り着いた先。
溺愛の業火