溺愛の業火
「清水、その原因を追究しているのか?」
「した後だよ。」
思考停止で、作業の手も止まってしまった。
自分に自信のない原因。それを清水くんは知っている。
思わず視線を向けた。
清水くんの視線は、私と合うことはない。
彼は松沢くんと会話しながら、作業を手伝う訳でもないのに、目線は机の上。
思い詰めている様にも見える。
私は苦い初恋を経験し、その後は恋と言うよりも憧れる程度に止めた。
自分なんかを好きになってくれるはずはない。そうやって線を引いて、逃げてきた。
「過去より俺を見て欲しい。ねぇ、篠崎。君は何度、好きだと伝えれば受け入れてくれるのかな?」
清水くんは、ゆっくり私の方に顔を向け、徐々に私の目を捕らえていく。
目が合って、彼は苦笑する。
痛む胸。泣きそうな自分に嫌気。
口を開いて、声を出そうとするけれど出なかった。
清水くんは私から視線を逸らし、席を立つ。
「清水、どこに行くんだ?」
咄嗟なのか、松沢くんが彼の手首を掴んで引き留める。
「心配するなよ、お前に情報が入る程度だろ?」
流し目で答えて手を振り払い、とても冷静には見えなかった。
私たちは、足早に教室を出て行く彼の後姿を見送る。
「篠崎。この間、準備室に閉じ込められたんだって?」
視線を松沢くんに移すと、彼はまだドアの方を見ていた。
誰から聞いたのかな。
それは、彼が向かった先と関係が……
まさか。
「松沢くん。あの、もしかして清水くんは犯人を知っているのかな?」
少しの恐怖と震えが生じる。