溺愛の業火

見下ろす視線に息を呑む。
彼の表情は悲しみを伝え、その感情に胸が痛くなるから。

「君の心は、まだ幼い頃に想いを寄せた奴に囚われているの?」

彼の左手は私の手首を捕らえたまま、私を逃がすことなどない力。
それなのに、右手は弱々しく私の胸元に手を当てて。

心臓の位置。
服を通り越して、彼の熱を感じる。

私の心には。

言葉を詰まらせる私に苦笑を見せ、彼は手を置いた胸元に頭を添える。
背の高い彼が、小さく見えて。

湧き上がるのは愛しさ。
その感情が私を突き動かしていく。

自由な方の手で清水くんを抱き寄せ、私は彼の頭に頬をすり寄せた。

「好き。」

自然と出た言葉。
清水くんは私の行動を受け入れたように身動きもせず、問う。

「俺と、付き合ってくれる?」

「うん。」

「本当に?」

あれ?

彼は顔を上げ、私に最高の笑顔を見せた。
その表情に、どこか違和感。

それは私の手首を掴んでいた手が腰に移動し、背中を通り首元まで指が滑っていくのを感じたから。
心臓に触れるような位置にあった手が頬に移動。

少し安心したけど、何かが違う。

「キス、してもいい?」

また彼に流されているんだと気付く。

もう、それでもいいかな。
彼が顔を近づけて額を合わせ、私の返事を待つ視線に愛しさが増していくから。

「そうね、私は好きな人としかキスしないよ。」

私は目を細め、首を傾げて微笑む。

「溺れてしまいそうだ。」

囁く彼の愛情を受け入れて。
軽く重ねる唇。

触れるところから熱を共有し、私は落ちていく。
恋焦がれ、身を滅ぼすような想い……





end
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