溺愛の業火

あれ?自分の部屋、綺麗にはしてあるけど。
彼に見られているのだと思うと段々、恥ずかしくなってきた。

部屋に戻ると、小さな机の前での正座姿。
少し顔が赤いような気がするけど、暑くはないよね。

彼の前に座って、飲み物を並べる。
何か、会話しないと。

「あの、さっきの事なんだけど。」

「え、何?」

お互いに見つめて、沈黙。
気まずい雰囲気。

「あの、松沢くんに対して一颯くんが怒っていたのに、私が。」

笑っていたのは何故かと、不機嫌になったよね?
首を傾げ、反応を見ていると。

彼は口元だけの笑みを返す。

「キス、してくれたら許すけど?」

そんなに怒るような事じゃないと思うけど。
どこか拗ねている様に見えるのが愛しくて。

「わかった。」

私は彼に近づき、顔を近づける。
すると、機嫌は良くなるどころか悪化。

鋭い眼。
どう対処していいのか不安なドキドキ。

「目、閉じてくれない?」

「嫌だ。見てみたいな、キスする表情。」

ムカつく!
彼の余裕な態度に、自分は未熟で稚拙なのだと痛感するようで悔しい。

「見せるわけないでしょ!」

一颯くんの目を手のひらで塞いで、軽く唇を重ねた。

「ふふ。可愛いね。」

「知らない。」




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