溺愛の業火
「気持ちは嬉しいけど、嫌いじゃないけど、ごめんなさい。」
私は手にしていた物を机に置いて、自分の荷物を持って逃げた。
彼の表情も見ることが出来ず、溢れ続ける涙を拭いながら必死で走って。
思い出せば、一緒に作業しながら交わした会話や彼の表情に、心は素直だった気がする。
楽しくて、淡くときめいていた。
あなたを嫌いな人なんかいない。
好き。彼からの告白が嬉しくて、涙が止まらない。なのに苦しい。
夢にも思わなかった。彼の心が私にあるなんて。
どうしたらいいのか分からない。
彼は、これからクラス委員ではなく生徒会長になる。
今まで以上に忙しくなれば、私との接点も少なくなっていくだろう。
私が霞んでいく。失望するかもしれない。
私に告白したことを後悔するかも。きっと。
夜、ラインで謝罪を入れた。
作業を途中で投げ出し、任せてしまった事を。
告白は無かった事に出来ないだろうかと、あえて触れずに。彼の返事を待った。
『あの後、松沢が手伝ってくれたから大丈夫』
松沢くん、部活に入っていないよね。他のクラスで遊んでいたのかな?
『ありがとう。明日、松沢くんにお礼を言っておくね』
『松沢に嫉妬するよ』
どう返していいのか戸惑っていると、彼の気遣いなのかな。
『おやすみ。また明日』