溺愛の業火

『触れて:side和叶』

『触れて:side和叶』


頭痛が酷くて休んだ次の日。
家まで一颯くんが迎えに来た。

「おはよう。体調は、どう?」

「おはよう。なんとか頭痛は治まったかな。熱も出たのか、少し怠いのが残っているかも。」

彼の心配そうな表情に、嬉しくなってしまう。

「あまり無理しないようにね。」

「ありがとう。」

隣を歩きながら、いつもと違う空気を感じ取る。
気遣っているのかな。

付き合い始めて、距離が近づいたはずなのに。
心は寂しくなるなんて、私は何かおかしいのかな。

一颯くんは私が休んだ昨日の事を話しているけれど、いつもの松沢くんへの不満は含まれていない。
奇妙な不安。いつもと違う何かに、心がざわつく。

視線は下がり、目に入ったのは揺れている彼の手。
つないだら駄目かな。

「ね、やっぱり体調が悪いの?」

私の前に来て覗き込むように少し屈んで、見上げる眼が幼く見える。
自分を心配してくれているのに。胸が苦しい。

愛しさが増していく。
息苦しいようなもどかしさ。

「大丈夫。あの、一颯くん。手をつないでも良いかな?」

手を差し伸べ、ぎゅっと目を閉じた。

私の手に触れる温もり。手は優しく握られて。
目を開けると、頬を染めた幸せそうな笑顔が目に入る。


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