溺愛の業火
俺を弱い力で押し退け、和叶は視線を合わせずに立ち上がる。
「篠崎、ごめんな。だけど。」
「うぅん、私の覚悟もなかったの。」
覚悟も無い彼女に、俺は自分の欲求を押し付けたのだろうか。
和叶が荷物を持って、部屋から出て行くのに見送りもせず、その場から動けなかった。
「松沢、俺は……お前に感謝すべきなのかもしれない。」
やっと出た言葉。
「清水さぁ、コレって持ってる?」
落ち込んだ俺には目に入らない。
動きの鈍い俺の前に、小袋が転がる。
コレって保健体育で見た。
機敏に顔を上げ、松沢の方に視線を向ける。
「ちなみに、使い方とか分かる?タイミングとか。」
つまり、自分が和叶としようとした行為は。
「いや、違う。そこまで……」
本当に?
和叶の香りや温もり、柔らかさに酔いしれるように流されていた。
どこか意識はさ迷う様で、欲求を満たすような本能。
触れたい。もっと。
彼女も触れて欲しいと言ったけれど。
俺と感情は同じだっただろうか。