溺愛の業火

男のマナー:side清水

男のマナー:side清水


部屋に戻ると、和叶は服を整えて絨毯の上に正座していた。
視線は漂う様で、定まらない。

気恥ずかしい所に、松沢なんて入れるんじゃなかったかな。

「ごめんね、コイツも正座させるから。」

何故か松沢は俺の肩を力ずくで抑え込み、和叶の横に正座させる。
何の罰なんだ。

「和叶、君は足を崩していい。悪いのは全部、俺だから。」

視線を落とした和叶。
心配して覗き込むと、涙が滝のように流れ落ちてくる。

「松沢。お前も謝れ!」

腕で顔を隠し、手の甲や手首で涙を必死に拭う和叶。
どうしていいのか戸惑う。

「ごめん、和叶。」

そっと後頭部に手を回して抱き寄せた。
表情を見たくて、彼女の前髪をかき上げるように撫でる。

涙ぐんだ表情に同調しそうだ。
涙を堪えて、首を振り続ける和叶。
唇を噛み締め、泣きそうなのを我慢する姿。

泣かないで欲しい。
額に口づけ、頬に流れた涙を指で優しく拭った。

「ごめんなさい、一颯くん。松沢くんも。私、帰るね。」


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