溺愛の業火
「ごめんなさい。」
彼から逃げられず、好きなのに恐怖が襲う。
「和叶、謝らないで。大丈夫、君を汚すことはしない。……まだ。」
私に覚悟がないのを知って、追い詰めたんじゃない。
私が彼を追い詰めてしまったのかもしれない。
恐怖とは違う感情。
彼に対する愛しさと、自分に対する情けなさ。
嫌われたくないのに、自分の我儘に気落ちして。
「ねぇ。俺の事、好き?」
彼は私の指に軽く口づけ、目を閉じた。
「一颯くん、私はあなたが好き。」
一颯くんは目を開け、顔の角度を変えて、私の小指の下辺りに噛みついた。
歯が喰い込んでいるけど、甘噛み程度。
私の反応を見ながら何度か繰り返す。
「あなたの愛情に流されたい。」
私を逃がさないで。捕らえていて欲しい。
逃げ腰なのを知っているよね。
だから私の気持ちを、あなたは確かめる。
一颯くんは口を離して、噛みついた部分を舐めとった。