溺愛の業火

「深いキス、してもいいよね?」

捕らえられていない方の手を彼の胸元に当てて、自分から距離を更に縮めた。
彼は両手を私の頬に当て、額から鼻筋に唇を滑らせる。

「俺の事、好きなら……いいだろ?」

もっと強引だった彼が、慎重なのは気のせいじゃない。
欲求を満たそうとするのは同じ。

すれ違うような感覚に膨らむ気持ちは、もどかしさ。

「好きだから、もっと求めて。」

顔を上げ、一颯くんに自分から唇を重ねた。
細めた視界に彼の視線。

一颯くんは、ついばむ様なキスを繰り返す。
それに自分が応えているのか分からない。

彼の指が私の口に触れて、息継ぎに開いた隙間に入り込む。
閉じられない状態で、深くなっていく口づけ。

舌の柔らかさ。
息苦しいような熱。

自分で触れない場所が、刺激を与えて敏感になる。

力が抜けて、彼の腕に支えられながら床に座り込んでしまう。
それでも続く口づけと、優しく体に触れる手。

彼の愛情に応えて淫ら……




< 68 / 92 >

この作品をシェア

pagetop