溺愛の業火

2025バレンタイン短編side和叶

2025バレンタイン短編side和叶


今日はバレンタインだから、一緒に帰る約束をしていたのだけど。
待ち合わせの時間になっても来ないから、生徒会室に足を運ぶ。

しかし鍵がかかり、呼びかけに反応もなく人の気配すらなかった。
黙って帰ることはしないと思い、探しに向かう。

校舎の裏口、鍵が開いている。
ここは一颯が、何か失敗したり落ち込んだ時に来る場所。

夕暮れ。
冷え込み、風邪をひかないか心配してしまう。

小さく丸まった背中。
普段、誰にも見せない弱さ。

そっと近づいて横に座り、寄りかかる。
一颯は私に視線を向け、口元だけの笑み。

「ふっ……温かくて、和叶のいい匂いがする。」

触れても、拒否されないのはわかっていたけれど。
どれだけの時間、ここに居たのか。
一颯の服は冷えて、触れた部分が私の体温を奪っていく。

「そ?少しは癒されるかな。」

一颯も私に寄りかかり、腕を回して肩を抱き寄せた。
徐々に抱きしめる力が強くなっていく。

私から視線を逸らして、明らかに落ち込んだ姿。


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