VS‐代償‐
勝負

可愛い?


石代 真歩(いししろ まほ)。

朝は早く起きて、予習を行う日課。
時間が来れば、着替えて台所に立つ。
朝食の支度と、お弁当の準備。
それが終わると、両親を起こす。
朝食を家族で食べ、片付けを済ませて身支度。

「行ってきます!」

申し分のない子供。それを演じ続けた人生。
幼き日に現れた彼の存在が、私を変えたの――


「まぁ、可愛い!息子さん?こんな可愛い子は、見たことがないわ!」

ずっと、私を見つめ続けてきた母の表情とは違う。
目の輝きと歓喜。

それでも、現れた彼と友達になった。
一緒に遊んで楽しかったから。

その夜トイレに起きた私は、リビングの明かりに近づいた。
母が嬉しそうに、仕事から帰った父に語る。

「本当に、可愛いわぁ~~。まだ、小学生にもなっていないのに、勉強も出来るって♪将来……」

ウソツキ。
お母さんが私に言った言葉は、ウソだった。

「可愛い。世界で一番、可愛い私たちの娘。勉強なんか出来なくていい。優しい子になって。」

そうね。優しい子になるわ。
嫌いな彼と、仲良く出来るぐらいに。


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