VS‐代償‐
外国人の血が入った彼の肌は、白い。
まつ毛も長く、切れ長の目。瞳の色は薄く。
髪は、ふわふわの茶色。
私が成れないモノ。
せめて自分を磨こう。彼に一歩でも近く、すべての事を。
心に巣食った感情は、消えずに何をエサにしたのかヒッソリと成長を続けていた。
在原 涼(ありはら りょう)への敵対心。
中学になり、周りが色めきだす。
小学生の時の色めきに、無関心だった私。
それは被害が少なかったからだと知る。
「石代さん。在原くんと、付き合っているの?」
この質問に、うんざりしつつ。
笑顔で答える。
「幼馴染だと言って、特別な感情を持たない。私が、彼を特別視していると?」
「うっ。違うなら良いの!」
言葉に詰まり、走り去る女の子の背中を見つめる。
「ふふ。敵対心は、十分特別視だと思うけど?」
くすくすと、意地悪な笑いで近づいてくる友達。
更月 サユ(さらつき さゆ)。
「サユ、何の事?さ、授業に遅れちゃう。戻りましょうね♪」
「くくっ。類友って知ってる?真歩は、私と同じ匂いがする。崩れるのが楽しみだな。」
知ってる。
きっと、彼が現れなければサユのように成長していただろう。
心地よい。本当の自分を見ている気がするから。
だから彼が嫌いなの。
「真歩、帰りに図書館へ寄らないか?」
涼の爽やかな笑顔に憎しみしか感じない。
それでも私は笑顔で答える。
「いいわよ。テストも近いし。」
敵情視察のための時間。
図書館は静か。
チラリと、彼の教科書を見る。
教科は、現国。それは私が唯一、彼に勝てる教科。
「ね、真歩。告白されたって?」
【ドキッ】
会話の内容じゃなく、視察を勘ぐられたのかと焦った。
「勉強に関係ないでしょう?」
内心の焦りを誤魔化すように、ノートを閉じる。
「俺には、関係あるよ。」
何、言ってんの?