VS‐代償‐

「真歩、俺をもっと嫌えばいい。簡単に解放してなんかあげない。君が俺に勝つまで。俺に振り回されればいい。君の変わらない感情は、俺が見せずにいたものを引きずり出した。あっけなく、周りの俺に対する理想像も崩せるはずだ。くすくすくす……君は、知るべきじゃないかな?」

鋭い視線に、熱を感じる。
私が知らない涼の部分。知ろうともしなかった。私の見ることができなかった人格。

見えなかったものが私の記憶を塗り替えていく。
私が目指した理想とは、大いに異なる。

これは、本当に涼なのだろうか?
それなら、今までの敵意は?私の時間や努力は、どうなるの?すべて、無駄だった?
涼が好きなのは……

「涼、時間が欲しいの。考える時間を……」

「ダメだ!!頭が良い君は、俺から逃げる方法を探すんだ。そんなのは許さない。勝負を言い出したのは君だよ?俺は知っている。君が負けず嫌いだと。それが可愛いと思うんだ。だから利用するね。君は、負けたままで勝負から逃げることは出来ないだろ?」

涼の激しい感情が、私を呑み込んでいく。
この勝負を継続するように。

本当は、そうするように促すのが何なのか。
今は、理解しようともせずに。

ただ、望んだ。
勝負の継続……





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