VS‐代償‐
「ふふ。見て、可愛い……」
遠くで、大人のカップルが私たちを見て出た会話。
「“可愛い”?それは……イコール涼の事、だよね?」
私の不機嫌な理由……
私が幼い頃に、母は涼を“可愛い”と褒めた。
一緒にいると、何度も聞こえた“可愛い”は、涼への賛辞。
おやぁ??
「あのさ、それ……真剣で言ってる?」
私を見つめ、睨んだ涼の目は切れ長で……
可愛いとは似つかない、とても凛々しい表情。
しかも、私が不機嫌になるキーワードを涼は“知っていた”。
好意と敵意の違い……
「ズルい!」
私の機嫌は、別の事で悪くなる。
それを告げるのも悔しくて、気恥ずかしくて……好きな気持ちに加わる愛しさ。
困ればいい……
私が理解できなくて、悩めばいいのに。
「何度かさ、俺達を見て“可愛い”カップルとか、真歩を見て可愛いとか言うのが聴こえる度に、勉強を切り上げて帰るから……勘違いしてたの?」
「これだから、頭の良い奴は嫌いなのよ。もっと、言葉を選んでほしいわ。」
机の上にある本や筆記具をカバンに入れ、帰り支度。
「ちょ、何、……真歩、何で怒っているの?」
「……大っ嫌い!」
置いて去って行こうとする私の手を引いて、その場に留めて涼は微笑む。
「可愛いね。」
卑怯なあなたに、次こそ勝つわ。
勝負……
end


