素顔は秘密ーわたしだけのメガネくんー

ー俺の"わがまま"ー

放課後の裏庭
今日も変わらずふたりきりの時間

だけど今日は
どこか葵くんがいつもより少しだけ、距離を詰めてくる

「…最近さ」

彼がぽつりと口を開く

「君が他の男子と話してると…少し、気になるんだよね」

「えっ……?」

突然の言葉に心臓が跳ねた

「い、いや、だって、話しかけられたら答えるし…」

「もちろん、それは分かってる」

葵くんは静かに微笑んだまま
でもその目の奥が、わずかに鋭く光っている

「……でも、俺以外とあんまり仲良くしてほしくないって、思うのはワガママかな」

低く囁くその声に
また身体が一気に熱くなる

「わ、わがまま…じゃないけど……」

「ふふ…そう?」

またそっと髪に指を絡めてくる

優しく撫でられるたびに
心臓が苦しくなるほどドキドキしていた

「俺の隣にいる時だけは……俺だけ見てくれたら、それでいい」

甘くて、優しくて
でもその言葉には確かな独占欲が滲んでいた

「ずるいよ…葵くん」

「……ずるくしてるつもりないけど」

彼は目を細めて、わざとらしく小さく首を傾ける

「君が…勝手に可愛いから、独り占めしたくなる」

そのまま
ゆっくりと顔が近づく

けれど今日もキスはせず
焦らすように
ほんの数センチの距離で止まる

「…焦らしすぎ?」

「も、もう…!」

私が真っ赤になって俯くと
彼はくすっと笑った

「可愛い」

本当にもう、ズルい
でも
このズルさがたまらなく好きになっていっていた


それを感じるたびに
私はどんどん彼に惹かれていく
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