素顔は秘密ーわたしだけのメガネくんー
ー秘密のままー
文化祭が終わった翌週
教室の空気は少しだけざわついていた
わたしたちの噂が
もう完全にクラスの半分くらいには広がってきていた
七海は
友達の視線や探るような会話に
内心ずっと落ち着かなかった
「ほんとに付き合ってないの?」
「私たちには内緒なの〜?」
「な、なんにもないってば!」
(……でもほんとは、あるんだけど)
心臓が苦しくなるような緊張感
それでもまだ秘密のままでいたい気持ちもあった
誰にも知られたくない
彼との甘くて独占的な世界
そんな七海の内心を
もちろん葵は全部分かっていた
***
放課後、裏庭
今日もまたふたりは秘密の時間を過ごしていた
葵は静かにメガネを外し
“俺”に切り替わる
「……最近、周りの視線キツくなってきたな」
「だ、だよね…」
七海が苦笑すると
葵は腰を引き寄せて耳元に囁く
「けど、なーにもしねぇで『違います』ってとぼけてる七海が、また可愛いんだよ」
「も、もう…」
顔がまた赤くなるのを抑えられなかった
「なあ」
甘い低音がすぐ耳元に落ちる
「バレんの怖ぇか?」
「…すこしだけ」
七海が正直に答えると
葵は少しだけ目を細めた
「……なら、もういっそバラそうか?」
「えっ!?だ、だめだよ!」
即答する七海に
葵はククッと低く笑った
「冗談。まだ俺も、こうやって秘密のまま楽しんでるからな」
そう言って
七海の頬にそっと唇を落とす
甘くて、でもどこか意地悪で
独占欲のこもったキスだった
七海の胸は
また一段と熱く高鳴るばかりだった
***
その頃、教室では
「ねぇ…そろそろ本人に直接聞いてみる?」
「えー!それはちょっと…でも気になるよね」
「でもあの葵くん、なんか壁あるし…」
「むしろ七海に探り入れるのはアリじゃない?」
ついに周囲の女子たちは
“直接確認作戦” を考え始めていた
ふたりの甘い秘密は
もう限界ギリギリまで膨れ上がり始めていた――