クマとナデシコ 博堂会次期若頭候補の熊井宗一郎は撫子さんの愛が欲しい

 体格差を考えて、いつも変わった体位はしなかったが宗一郎が撫子の腰の下に詰める為のクッションを掴んだとき。
 起きる、と腕を伸ばす撫子は「座ってシよ」と呟いた。

 「い゛、いんですか」
 「ん……」

 恐るおそる確認を取る宗一郎にバスタオルの上に座った撫子は彼の胸元を指先でつつ、と撫でる。血流が増えたのか、そこはパンパンに張りつめていて。

 「すごいね」
 「あ、う……ううう……」
 「宗くん可愛い」

 撫子に触れられてびくん、と肩を跳ねさせた宗一郎だったが色々と限界すぎる為に彼女が座りやすいように座り直す。

 「撫子さ、ん……足を投げ出しておけば座れそう?」
 「うん。ちょっと待ってて、ね」

 後ろ手に手をついてくれた宗一郎に対して撫子は立ち膝になったのだがぴたり、と動作を止める。

 「なんだか私が襲ってるみたい」
 「いや、うわ……あああ、だめ、そんな」

 そんなことを言われては宗一郎も耐えられる訳が無く……遊びが過ぎたかな、と撫子が思ったとき。
 ぎり、と掴まれた手首。そこには若干呼吸が激しくなっている宗一郎がいた。

 「あ……今のいや、だったかな」

 前に宗一郎の事を手だけで愛した事もあったのだがその時は女性からの、撫子からの行為については「好き」と言っていた。突然、気が変わったとも思えない。

 「エッチすぎる」
 「え……あ、うん。ね、そうだね……ふふっ」

 宗一郎の真剣な眼差しと言葉が不釣り合いで撫子は吹き出してしまうがこれから自分たちは夫婦になるのだ。互いにちょっかいを出して楽しむことに制限はない。

 「撫子さん、今夜だけは泣いても止められませんよ」
 「ん、うん……それは、承知してるけど」
 「俺はあなたからこんなにも愛されていたなんて」
 「えっ、あっ、宗く……んぐっ」

 唇を唇で塞がれて。
 それからはもう、彼にされるがままであったのだが撫子は涙がひとつ、零れそうになる。
 宗一郎に抱きかかえられながらこんなにも『愛情』を素肌に受けるなど。もっと早くに自分は、なんて鬱屈とした考えも今や飛んでしまっていた。

 赤い頬、滲む涙――二人だけの濃密な時間。
 宗一郎は撫子を抱き締めるとその肩口に頬を寄せる。

 「あなたに愛されて、俺は幸せです」

 夫婦となることを意識してから宗一郎は撫子のことは敬意を込めて『あなた』と呼ぶようになった。それは『龍堂』のブランドを持つ彼女ではなく、ただ一人の女性として愛していることを意味していた。

 「さて……愛の告白も終わったことですし」
 「え、そ……く、ん?」

 にこっとチャーミングに笑った宗一郎の目を見た撫子は咄嗟に彼の腕から逃げ出そうとする。目だけ、笑っていない。

 「だーめ」
 「や、だ、やだ、宗君ぜった、い、凄いエッチなことす、」

 撫子の震える抗議の声はむなしくもそこで途切れてしまった。


 そしてそれからは夢のような時間だった。
 撫子といっぱいいっぱい気持ち良いことを探り合い、共有する。合間にキスをして、撫子も宗一郎のベビーフェイスな頬を撫でたり、はたまたお尻の方を撫でてみたり。

 互いに愛して、愛されて。

 親同士が決めた許婚の関係を越えてこれからは夫婦になる二人はじゃれ合うように夜を過ごした。

 「も……だめ……」

 流石に明け方、とまではいかなかったが深夜、ベッドの上で崩れてしまっていた撫子は宗一郎にぐずり始める。そんな様子ではシャワーなど浴びられるはずもなく。
 体を冷えさせないようにバスルームと寝室を行ったり来たりと右往左往した宗一郎がやっと落ち着いてベッドにもぐり込むころには撫子はすっかり、先に眠ってしまっていた。



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